食事療法と運動療法だけではおきにくいのですが、飲み薬や、インスリン注射では要注意です。 日本糖尿病学会は低血糖の定義をしていませんが、69以下を低血糖と定義するのが良いと思います。 特に車の運転をする方は69以下にならないようにして下さい。 低血糖がひどくなると空腹感、手のふるえ、動悸、冷や汗、目のかすみ、思考力低下(昏睡)といろんな症状がでます。 ただ問題はこの自覚症状と血糖値が一致しないことがあります。 私の患者さんでも空腹感があまりにも強いので、血糖値を測ったところ148ということがよくあります。 本物の低血糖では、ブドウ糖10~20g飲むことが必要ですが、148の時ブドウ糖10~20g飲むと200を超えて合併症につながります。 まず血糖値を測ることが重要です。 低血糖発作時、眼底出血がひどくなったり心筋梗塞をひきおこしたり、年配の方では、脳細胞へのダメージが強くボケが進みます。 交通事故の原因にもなります。 低血糖を繰り返すと、「無自覚低血糖」といって自律神経が麻痺して、自覚症状が消失して突然意識不明で倒れます。 低血糖を繰り返さないことが重要です。 高血糖も、低血糖もよくないわけで、血糖自己測定を行い、きめ細かな治療をすることが大切です。
半年に1回は眼科による眼底検査を受けて下さい。 毎年3000人の方が糖尿病のために失明しています。 健康診断で行われる眼底カメラでは瞳孔を散瞳していないので糖尿病の方には不充分な検査です。
現在29万人を越す方が人工透析(血液透析)を受けていますが、その原因の第1位が糖尿病です。 糖尿病腎症の早期診断には血液検査ではなくて、尿中微量アルブミンと、尿蛋白の測定が必要になります。 持続性蛋白量の出現する第3期でなく、その前の微量アルブミン尿だけ出ている第2期の時に強力な治療をしないと、腎症の進行が進んでしまいます。 (腎症は第1期~第5期まで分類されています。)
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が120以下、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が40以上中性脂肪が150以下が目標です。
タバコは肺がんの原因とされていますが、本当に問題なのは喫煙で活性酸素が大量に発生して、全身がさびてしまうことです。 血糖値が高いと体がさびるわけですが、タバコを吸えば更にさびが増えてしまいます。 禁煙が大切ですね。
「死の四重奏」といわれる糖尿病、高血圧、肥満、高コレステロール血症に加え、タバコも入れると、「死の五重奏」になります。 この5つの要因は一歩手前でも油断できないものです。 少し血糖が高く、血圧も少し高め、少し肥満気味で、LDLコレステロールが少し高く、タバコも少々というのがとても良くないわけです。 町のワルが1人ではたいしたことなくても、2~4人集まるとかなり危ないことと同じです。 危険因子の多い方はがんばって治療に励んで下さい。
以上まとめると、糖尿病コントロールとは、
が全て必要です。
最後に糖尿病における自己管理とは、WHOの説明によると「糖尿病患者さんの主治医は患者自身である」ということです。 糖尿病をよくするのは、主治医ではありません。 主治医はもちろんいろんなアドバイスをし、薬、インスリンなどを処方しますが、食事を守ったり、運動したり、血糖測定したり、全て患者さん自身の行動が結果に跳ね返ってきます。 病院や、主治医にお任せではなく、私が主治医だと再確認して下さい(子供の勉強と同じですね)。 自己管理するためには前に述べた「5つのはかる」が大切になります。
糖尿病の治療では、毎日気を使うことが多く、つい投げやりになる事が多いものですが、あせらず、がんばりすぎず、ゆっくりできることから始めて、長続きさせることがポイントです。 私自身は糖尿病の方を上から目線で引っ張り上げ、叱咤激励するのではなくゆっくり走るマラソンの伴走者になれればよいかなと思っています。