葛飾区 江戸川区 糖尿病治療 古川内科胃腸科|糖尿病について
糖尿病について

糖尿病は厚労省の平成7年の調査でも増え続けており、糖尿病患者890万人、予備軍1320万人と推測されています。
糖尿病は大多数の患者で自覚症状がないのが特徴です。  口渇、多飲、多尿、体重減少は常時血糖値が400を超えている場合であり、350以下だとほとんど自覚症状がありません。

血糖値が高いのが良くないのではなく、高血糖が長く続くと合併症が少しずつ進行し、それが積もり積もって動脈を詰まらせ(脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、足の虚血)神経を痛めたり、腎不全、視力低下に繋がる訳です。

糖尿病について教科書のように説明しても面白くないと思いますので、私が都立墨東病院で行っている糖尿病教室での様子をライブ風に再現してみようと思います。  大切なポイントを主に記述してみます。

まず次の2冊の教科書を手に入れることをおすすめします。

  • 「糖尿病食事療法のための食品交換表第6版」日本糖尿病学会編 文光堂
  • 「糖尿病治療の手びき」日本糖尿病学会編 南江堂

糖尿病の患者さんが「自己管理」する為に行うべき「5つ」のはかるがあります。

体重をはかる
標準体重の出し方  身長(m)×身長(m)×22
例えば身長が 「175cm(1.75m)の方は1.75×1.75×22=67.4kg」 「150cm(1.5m)の方は1.5×1.5×22=49.5kg」

体重の多い方はまず、現在の体重の5%を減らすことを目標にすればよいと思います。

万歩計(歩数計)ではかる

“食後の高血糖”を抑えるため1日3回各食後食べ終わって15分位たってから20~30分間歩くことが大切です。  早足やジョギングでなく、普通の速さでよいのです。  1000歩を速く歩いても、普通に歩いても血糖値の下げ方はかわりません。  万歩計の正しいはかり方は、朝付けたら途中ではずさないでつけっぱなしにして夜休むまでの総計です。  ふだん3000歩/日の方がいきなり1万歩、歩くと膝を痛めます。  毎月1000歩ずつ増やしていけばよいのです。  目標は最終的に8000~1万歩です。  膝の悪い方はとぎれとぎれの散歩(5分歩いて5分休む)でも充分効果があります。  雨の日などは家の中でのラジオ、テレビ体操、筋トレももちろん効果的です。  食前の運動は飲み薬、インスリン注射の方では低血糖を起こしやすいのでおすすめしません。

血圧をはかる

日本人の約4分の1が高血圧といわれていますが、糖尿病の方は、病気の経過と共に約半数が高血圧を合併します。

血圧計は上腕式を使用して下さい。  指や手首ではかるのは値が不正確なのでおすすめしません。  血圧は24時間で変動するので、各食前や寝る前に5分位静かにし、腰かけに座ってテーブルの上ではかります。  1回でなく2~3分おいて2~3回測定して記録します。  各値は変動しますがたいてい1回目が1番高い値となりやすいです。  食後、運動後、入浴後、アルコールを飲んだ後では、血圧は下がっているので基準にしないことです。  病院ではかる血圧は白衣性高血圧といって高めになりやすいので、家庭血圧の値が一番正確といわれます。  家庭血圧の目標値は糖尿病では125/75未満とかなり低い値に設定されています。  血圧は24時間で変動し、普通は体温の変動と同じように夜間は低く、夕方5~6時が一番高いのですが、早朝高血圧といって、朝起床時が高くあと下がるのは、脳梗塞、心筋梗塞を起こしやすいといわれます。  こういう場合、夕食後や寝る時に降圧剤を飲めば一日中血圧のコントロールが良くなります。
血圧の日内変動を知るため毎日決まった時間でなく、各食前、寝る時の血圧を色々組み合わせてはかってみてください。  (いつはかっても125/75以下が目標です。)

食事の量をはかる

標準体重×25カロリー

例えば175cmの方は67.4kg×25=1685カロリー(約1700カロリー)

運動量の多い方は~27位をかけますが、30をかけるのは多すぎると思います。  ほとんどの方は25で充分です。  糖尿病食にするとたいていの方が普段食べている量の半分から6~7割と言います。  総合病院では専門の栄養士に詳しく説明してもらえますが、専門の栄養士に会えない場合本屋さんで、1200、1400、1600、1800カロリーの自分に合う本を手に入れたり、または食事の宅配業者に2週間程届けてもらうのも良い方法と思います。  ただ、日本糖尿病協会のすすめる糖尿病食では、総カロリーの55~60%を炭水化物とし、蛋白質は1~1.2g/kg体重(1日50~80g)残りは脂肪となっていますが、炭水化物の割合が少し多すぎると思います。  血糖値を上げるのは炭水化物、つまり主食、果物、お菓子類、糖質の多い野菜や、根菜類です。  たんぱく質、脂肪は血糖値を上げません。  入院患者さんが初めて糖尿食に出会うと、主食のご飯は比較的多いのに、おかずの量がとても少なくてこれでは退院後も同じ糖尿病食を続けるのは無理ですと正直に言います。  総量規制は必要ですが炭水化物を40~45%に減らしておかずを増やすほうが、食事療法が長続きすると思います。  たとえば、肉をたくさん食べても炭水化物(主食など)をひかえめにすれば食後の高血糖はかなり抑えられます。  (注意:腎臓機能障害のある方は蛋白質制限が必要となります。)また、夏バテに良く飲まれる栄養ドリンク剤やスポーツドリンク等はブドウ糖が入っており要注意です。  蜂蜜やジャム、マーマレードは砂糖のかたまりです。  アルコールは血糖値を上げるからダメといわれますが、アルコールはブドウ糖には変換されません。  ビール大瓶1本飲んでも血糖値はほとんど変動しません。  問題はアルコールは血糖値を上げるといわれているので、薬やインスリン使用の患者さんではアルコールを飲むとき食事の量を減らしてしまい、低血糖を起こすことが実際に起きてしまいます(後述)アルコールはカロリー計算にいれないでください。  

血糖値をはかる

自分で血糖値をはかる「血糖自己測定」は「糖尿病自己管理」で一番大切なことです。  インスリン注射の糖尿患者さんには血糖測定器が病院から貸し出され試薬代も保険でカバーされますが、インスリン注射をしていない方も血糖自己測定を強くおすすめします。  (当院では測定器をほぼ全員に貸し出しています。)血糖値は健康な方でも24時間で変動がかなりあります。  がほぼ70~140mgの範囲にあり、100を超えるのはわずかな時間にとどまります。

糖尿病の合併症は「食後の高血糖」がひきおこします。  (空腹時血糖や食前血糖ではありません。)糖尿病の方の血糖値が一番高くなるピーク値は食べ始めから約50分~70分(1時間前後)でこのピーク値が180mgを越さないことが大切です。  各食前は80~110mgを目標にします。  血糖値は日内変動が大きく、また日々の血糖値も変動するので、過去2ヶ月間の平均血糖値をHbA1C(ヘモグロビンA1C)で表します。  HbA1Cは血色素にブドウ糖が何%くっついたかを意味し、目標は6.1%(JDS値)か6.5%(NGSP国際標準値)です。  食前が80~110で食後のピーク値が180を切るとこの値になります。  糖尿病の合併症は、血糖値が高いからおきるのですが、医学的な説明をしても複雑なのでわかりやすく言うと、血糖値が160~180を越すたびに体がさびていく、つまり鉄のくぎにさびがつくとういイメージです。  血糖値が高いと全身が同時進行でさびていくわけで、頭がさびると脳梗塞、目の水晶体がさびると白内障、網膜の血管がさびて切れると眼底出血、心臓がさびると狭心症や、心筋梗塞、腎では腎機能障害から腎不全、尿毒症に到り、足では壊疽(足がくさる)、神経では下肢の感覚が低下したり、神経痛がひどくなったりするわけです。  糖尿病は自覚症状がほとんどないので治療を始めても1年後には約半数の方が治療を中断し、合併症が出てからあわてて治療を再開することが多いのですが、それまでついたサビはなかなかとれません。  自覚症状が無くても血糖値を下げる治療を続けるのは合併症のない健康寿命を長くするため、つまり自分の目で見え、手足の麻痺も無く普通に運動できる運動健常人と同じ生活をするということです。

「主治医が受診時に血糖をはかるからよい」ではなく、血糖自己測定で1日の日内変動を知り、どの時間帯で血糖が下がりすぎるか(低血糖)上がりすぎか(高血糖)を知り、きめ細かい治療をするのが大切です。  糖尿病患者さんは各食前後、寝る時(インスリン注射の方は深夜の1~2時の血糖値)をバランスよくはかることが重要です。  血糖測定器はサイフや定期券と同じで家においておかないで持って出かけ勤務先でもはかるべきです。